連結財務諸表とは企業グループに属する複数の企業を一つの企業とみなして作成する財務諸表のことです。
一つの企業とみなすということですから、具体的にはまず企業グループ内の複数企業の財務諸表を「合算」して一つの財務諸表とします。
連結という言葉通りに個別企業の財務諸表を「連結」したのが連結財務諸表です。
ここがスタートです。
ただし、単に複数の財務諸表を合計しただけでは連結財務諸表とはいえず、親会社の関係会社株式と子会社の資本金、連結子会社間の売上取引の相殺などの修正仕訳を行った上で連結財務諸表を作成します。
会計規定に則した表現をしますと、「連結財務諸表は、支配従属関係にある二以上の会社からなる企業集団を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態及び経営成績を総合的に報告するために作成するものである」(連結財務諸表原則、第一)となります。
連結財務諸表は昭和52年から上場会社には作成が義務づけられています。
ともすれば国際会計基準の絡みで10年ぐらい前から連結財務諸表が導入されたと理解する方もおられるかもしれませんが、そうではなく、10年弱ほど前から有価証券報告書などが個別財務諸表ベースから連結財務諸表ベースになったということですのでお間違えのないように。
#有価証券報告書
株式を上場している企業などが金融庁長官に提出する報告書で企業の事業年度ごとの活動成果などの文章による定性的情報と、財務諸表を中心とした定量的な情報が豊富に記載されています。
親会社だけの個別財務諸表だけを作成して、連結財務諸表を作成・開示しないと親会社は次のような不正な会計操作ができます。
イ)子会社への不良資産の売却(とばし)
ロ)商品などを決算期末に大量に子会社に売却することによる利益操作
端的にいいますと、親会社と子会社の財務諸表を合算(連結)すれば利益と損失がチャラになるのですが、親会社の財務諸表だけを開示することで利益だけを 実態よりも多く見せることができることになるということです。
こうした会計操作は連結財務諸表を作成・開示することで防止することが可能となります。
同じ事業を営む企業でも組織形態を異にすることがあります。
例えば、A社は購買から販売までを一社で行っているが、B社は親会社は経営企画、マーケティングを行い、製造子会社、販売子会社を持ち、事業を営んでいるというケースです。
こうした場合、A社とB社とを単純に比較はできません。
A社とB社グループを比較しなければどちらが優れた業績を上げているか判断できず、そのためには連結ベースで比較する必要がでてくるということになります。
企業間競争は世界的規模で行われ、競争も企業間競争から企業グループ間競争になっています。
親会社は持株会社化するか、あるいは事業会社としてコーポレートブランドを確立し、企業グループとしていかに企業価値を増加させていくかという連結経営に取り組む企業が増えてきました。
例えば、2001年1月にソニーは上場していた子会社3社を完全子会社化(100%子会社化)しました。
こうした連結経営を行う企業に対しては投資家などは当然ながら連結財務諸表で企業業績を判断します。
付言すれば投資家などは企業グループの個別財務諸表の集計としての連結財務諸表と、その連結財務諸表を事業・地域別に分割したセグメント情報にも注目しています。
それと、事業を営まない持株会社(純粋持株会社)だけが株式を上場し、傘下に事業会社を展開するという組織形態をとっているケースがあります。
こうしたケースでは極端に言いますと、持株会社の資産は子会社株式のみで、収益は受取配当金ということになります。
これでは持株会社の財務諸表だけをみても、企業グループの事業範囲・規模もまったく投資家は知ることができません。
こうしたケースの場合も、連結財務諸表による開示が必須となります。
冒頭で具体的にはまず企業グループ内の複数企業の財務諸表を合算して連結財務諸表が作成されると述べました。
少しラフな言い方ですので、もう少し正確に説明します。
企業グループに属する企業にはトップの親会社が過半数の株式の株式を所有する企業もあれば、20%程度の株式の所有する企業もあります。
前者を「子会社」といい、後者を「関連会社」といいます。
そして、子会社については親会社が株式を過半数所有することから、子会社の株主総会決議を「支配」でき、子会社の経営資源を親会社の意思決定に従って利用・処分することができると考えます。
そのため、連結財務諸表作成にあたって親会社と子会社は一体とみて、それぞれの財務諸表を合算します。
一方、関連会社については親会社は関連会社の株式を20%とか30%とか所有しているだけですから、関連会社の株主総会決議を親会社の望むままに支配できません。
ただ、大株主であることには間違いないわけですから株主総会決議に「影響」は及ぼすことができます。
そのため、連結財務諸表作成にあたって親会社と関連会社の財務諸表は合算しません。
合算しない代わりに関連会社の損益の状況に応じて親会社の所有している関連会社株式の帳簿価額を増減させる処理をします。
これが「持分法」といわれる会計処理です。
付言すれば20%程度の株式所有の関連会社に対しては、別に60%程度所有する他の会社が存在し、その会社の子会社となり、連結上合算されることになる可能性があるわけです。
そう考えれば20%程度所有の関連会社に対しては合算はできないことは理解できると思います。
なお、子会社と関連会社の定義と範囲については上記で述べましたことより、会計規定上はもう少し範囲が広く、要件が詳細に規定されていますので、後ほど解説します。
連結財務諸表の構成は次の通りです。
・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結キャッシュフロー計算書
・連結株主資本等変動計算書
おおよそ個別財務諸表の体系と同様ですが、剰余金計算書は連結特有の財務表です。
また、連結貸借対照表・連結損益計算書は個別の貸借対照表などと比較して、科目表示などの要約がはかられるとともに、連結特有の勘定科目が表示されているのが特長です。
ここらあたりの説明は言葉で説明するより、実際に現物を見てもらった方が理解は早いです。
連結財務諸表は有価証券報告書に掲載されており、有価証券報告書は 「EDINET」や企業のHPの「投資家の皆様へ」などのページから誰でも無料でダウンロードできるようになっていることが多いです。
そこで、ご自分の好きな企業のHPにアクセスし、有価証券報告書をダウンロードしてみて、実際の連結財務諸表がどんなものかをご覧になることをお勧めします。
既に連結財務諸表についての知識はあり、もうちょっと内容の濃いのが欲しいという方は「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書(平成9年6月6日、企業会計審議会)」の第一部を読んでみることをお勧めします。
この意見書には今日の連結財務諸表(平成10年4月以降という意味です)のもととなる方向性が具体的に示されており、見直しの対象となった論点がまとめられています。
会計法規集を持っていない方はインターネットで検索すれば全文が見つかると思います。
ちなみに第二部は専門用語がポンポンとびだして、けっこう読むのが大変です。
連結財務諸表の達人になりたいと思う方のみ第二部はお読み下さい。