今回のテーマは、「管理会計は分解」についてです。
財務会計では、売上高など企業全体の数字を把握することが可能です。
しかし、全体の数字を見るだけでは、儲けるための施策のヒントは浮かびません。
たとえば、ある企業の昨年の売上高が3億2,640万円、今年の売上高は2億1,772万8,000円だったとします。
昨年から約1億円減少しているため、経営者としては挽回したいところです。
しかし、売上高全体の数字を示しても、現場で働く社員には何をどう改善すればいいのかわかりません。
全体の数字を把握しているのは経営者だけです。
社員1人1人は、その中の部分的な業務しか行いません。
したがって、どの業務部分が減少した原因なのかわからない数字を示しても、社員が自分のこととして改善できるはずがないのです。
このことから、財務会計で示された企業全体の数字は、管理会計によって分解する必要があるのです。
数字を細かく分解することにより、自分の業務に関係のある数字がわかります。
自分の数字がわかることで、社員1人1人が責任をもって改善のために行動することができるようになるのです。
全体の売上高を分解すると次のようになります。
・昨年
企業売上高3億2,640万円
=(事業所数)5✕(商品数)100✕(顧客数)1,200✕(商品単価)800✕買上点数0.68
・今年
企業売上高2億1,772万8,000円
=(事業所数)5✕(商品数)120✕(顧客数)960✕(商品単価)700✕買上点数0.54
このように分解することにより、売上高の構成要素のうち、何が減少したか、あるいは増加したかがわかります。
たとえば商品数は昨年に比べて2割増加しています。
これは減少の原因ではありません。
一方、顧客数は1,200から960に減少しているため、この顧客数が売上高減少の一因であることがわかります。
このように数字を分解することで、経営者から社員に対し「顧客数が減っているけれど、どう感じているか」、「普段現場にいて何か起こっていないか」と具体的な質問を行うことができます。
先程の全体の数字は、色々な商品を色々な方に売ってきた要約的な数字です。
要約的な数字について質問するよりも、上記のように分解した数字について質問する方が具体的といえます。
質問が具体的であれば、社員の中から「隣町にスーパーができた」とか「道路ができて交通の流れが変わった」といった話が出てくるかもしれません。
社員から具体的な話が出てくることで、初めて具体的な対策が打てます。
全体的な数字を把握することも大事ですが、あくまでそれは経営者の数字にすぎません。
企業の数字は、現場で働く社員が理解できるように分解しなければいけないということをご理解ください。