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減損の兆候の認識

減損の兆候の認識・判定

前に述べましたように減損会計の適用に際しては最初にどの範囲の固定資産等で減損の有無を判定し、減損損失を測定するのかという資産のグルーピングを行います。

その後次のようなステップで減損会計の処理を行っていきます。

(1)減損の兆候の認識
(2)減損損失の認識
(3)減損損失の測定

ここでは上記の(1)減損の兆候の認識について解説していきます。

減損の兆候の認識

減損会計基準(以下、「基準」とします)は、企業が保有するすべての固定資産等について時価等を算出し、減損損失が生じているかどうかを行うことは企業に対して要請していません。

そんなことをすれば企業の事務負担が膨大なものとなってしまうためです。

つまり、「基準」は次のような減損の兆候(兆し)が生じている固定資産等を拾い上げて、それらの固定資産等について次の(2)のステップである減損損失の認識に進むようにしています。

ただし、注意していただきたいのは次に記載しています様々な具体例はあくまで例示であり、状況に応じ個々の企業が判断することが求められているということです。

減損の兆候の例示

減損の兆候の例示(基準二 1)(減損会計適用指針11から)

(1)資産・資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益・キャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること

おおむね過去2期で判定することとされています。

ただし、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合は除かれます(適用指針12(2))。

(2)資産・資産グループが使用されている範囲・方法について、当該資産・資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること 。

具体的には、次のケースです(適用指針13)

・資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること

・当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを除却や売却などにより処分すること

・資産又は資産グループを当初の予定又は現在の用途と異なる用途に転用すること

・資産又は資産グループが遊休状態になり、将来の用途が定まっていないこと

・資産又は資産グループの稼働率が著しく低下した状態が続いており、著しく低下した稼働率が回復する見込みがないこと

・資産又は資産グループに著しい陳腐化等の機能的減価が観察できること

・建設仮勘定に係る建設について、計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っていること。

(3)資産・資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること

「経営環境が著しく悪化した」とは具体的には次のケースです。

・市場環境の著しい悪化:材料価格の高騰、製・商品店頭価格やサービス料金、賃料水準の大幅な下落、製・商品販売量の著しい減少などが続いている場合

・技術的環境の著しい悪化:技術革新による著しい陳腐化や特許期間の終了による重要な関連技術の拡散など

・法律的環境の著しい悪化:重要な法律改正、規制緩和や規制強化、重大な法令違反の発生など

(4)資産・資産グループの市場価格が著しく下落したこと

「著しく」とは、市場価格が帳簿価額よりも50%程度以上下落したときといわれています。

ただし、50%程度以上下落していない場合でも、減損の兆候に該当することもありうるため、「例えば、処分が予定されている資産で、市場価格の下落により、減損が生じている可能性が高いと見込まれるときのように、状況に応じ個々の企業において判断することが必要な場合がある」(適用指針89)ともされています。

要は機械的に数値に基づいて判断するのではなく、定性的な要素も加味して判断することを「基準」等は求めているわけです。

減損の兆候の認識のための情報

企業は、内部管理目的の損益報告や事業の再編等に関する経営計画などの企業内部の情報及び経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報など、通常の企業活動において実務的に入手可能なタイミングにおいて利用可能な企業内外の情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別することとなります(適用指針77)。

減損損失の認識へ

上記の減損の兆候の認識・判定プロセスで、減損の兆候を示しているとされた固定資産等が次の減損損失の認識のプロセスに進むことになります。