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減損会計の概要


このページでは減損会計の概要を記載します。

詳細につきましては次号以下で説明します。

減損会計とは

減損会計とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態において、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理です。

(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書より。以下、「意見書」とします)。

このように減損会計とは資産の「帳簿価額を減額する会計処理」であり、時価などが帳簿価額を上回ったときの増額(評価益の計上)は考えていませんので、時価主義の適用ではありません。

あくまで、「取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額」(意見書)と位置づけられています。

減損会計の適用時期

(1)減損会計の適用は平成17年4月1日以降開始される事業年度

(2)平成16年4月1日以降開始される事業年度から早期適用することも可能です。

企業サイドでは減損会計の影響の大きさから、適用が義務づけられる前から不要資産や遊休資産を処分し、固定資産廃棄損や固定資産売却損というかたちで固定資産の「含み損」を処理しています。

減損会計の適用対象となる資産

有形固定資産、無形固定資産、その他投資などが対象となります。

ただし、他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例えば、「金融商品に係る会計基準」における金融資産や「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については、対象資産から除かれます。

減損会計が適用される企業

実務上は、株式上場企業および会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)と考えればよいでしょう。

減損会計が必要とされる理由

減損会計が必要とされる理由としまして「意見書」は3つの項目をあげています。

(1)不動産をはじめ固定資産の価格や収益性が著しく低下している昨今の状況において、それらの帳簿価額が価値を過大に表示したままとなっており、将来に損失を繰り延べているのではないかという疑念があり、その結果、財務諸表への社会的な信頼を損ねていること

(2)減損に関する処理基準が整備されていないために、裁量的な固定資産の評価減が行われるおそれがあるがあること

(3)国際的にも、近年、固定資産の減損に係る会計基準の整備が進められており、会計基準の国際的調和を図るうえでも、減損処理に関する会計基準を整備すべきであること

ご存じのように、日本企業はバブルがはじけるまで売上(シェア)第一主義の御旗のもと、時価発行増資で調達した多額の資金を様々な事業に投資し、貸借対照表の固定資産・投資を膨らませてきました。

しかしながら、貸借対照表の資産額は肥大化する一方で、薄い利幅しか稼げず、ROE(自己資本利益率)も10%を超える日本企業は極めて少なく、低い収益率に甘んじていました。

それが、さらにバブルの崩壊で不動産・株式等の暴落で資産価額が暴落し多額の含み損をもたらし、低い収益率を消し飛ばしてしまうような多額の含み損を抱えた、「毀損した貸借対照表」となったわけです。

そして、こうした毀損して多額の含み損を抱え、社会的な信頼を損ねている貸借対照表から将来に繰り延べられるおそれのある損失を排除し、財務諸表への信頼性を回復するために減損会計が必要となったということです。

減損処理される損失金額

(1)固定資産の減損として処理される金額は帳簿価額と回収可能価額との差額です。

(2)回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいいます。

なお、使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいいます。

簡単に言いますと、固定資産が現在売却することで得られる金額(正味売却価額)もしくは将来に渡って固定資産を使用し続けることにより得られるキャッシュフロー金額(使用価値)が、帳簿価額を下回っている金額と考えればいいです。

減損会計の適用ステップ

減損処理は次のステップを経て、減損額が計上されます。

(1)資産のグルーピング
(2)減損の兆候の検討
(3)減損の認識
(4)減損損失の測定

各ステップの詳細は次ページ以下で書いていきますが、すべての固定資産に対して減損の損失を測定しようというのではなく、減損の兆候(きざし)が認められるものだけに対して減損を測定することになっています。

これは実務上の便宜を考慮したものです。

減損損失の税法上の取扱い

減損会計基準により減損金額は損益計算書の特別損失の計上されますが、税務上の扱いがどうなるか大きな問題となります。

減損会計基準と税務では時価の定義、評価損を認める要件、評価損の判定単位など大きく異なっており、減損会計基準を適用し、会計上、減損損失を計上してもそのまま認められるケースは少なく、申告書上での調整が必要となると考えられます。

減損会計導入の影響

最後ですが、減損会計導入による影響としては次のことが考えられます。

(1)不要な固定資産、単純化した言い方をすればキャッシュを生まない固定資産の売却・廃棄(本社、社員寮、福利厚生施設など)

(2)事業所(工場、支店、営業所など)の統廃合が多くなる。

(3)固定資産の売却が多くなる。

(4)同様のことですが、「持たない経営」に関心が集まる。

(5)固定資産がもたらすキャッシュフローということで、収益還元価値に対する意識が高まる。