有価証券は保有目的による区分がされて会計処理が行われます。その区分は下記の4区分となります。
(1)売買目的有価証券
(2)満期保有債券
(3)子会社及び関連会社株式
(4)その他の有価証券
(1)売買目的有価証券とは
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいいます。
つまり、短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有するものであり、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われるものです。
売買目的有価証券に区分することが可能な有価証券の種類は,株式だけでなく社債や国債も含まれます。
(2)売買目的有価証券の要件
保有する有価証券が「売買目的有価証券」として区分されるには,具体的に,以下の2つの条件を満たすことが望ましいとされています。
①有価証券の売買を業としていることが,(会社の)定款に記載されていること。
②独立の専門部署によってトレーデイングが行われていること。または,客観的にみて,明らかに短期的なトレーデイングを大量に行っていること。
つまり,一般事業会社が,売却益の獲得を目的に有価証券を一時的に保有したとしても,通常の場合は「売買目的有価証券」には該当しません。
(1)満期保有目的の債券とは
・満期まで所有することを目的で保有する債券をいいます。満期保有目的の債券は、満期まで保有し利息や元本の受取りを目的としています。
(2)満期保有目的の債券としての要件
①定められた償還日において額面金額による償還が予定されており、価格変動リスクがないこと
保有期間が漠然と長期であると想定し、保有期間をあらかじめ決めていない場合、または市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される場合には、「満期まで保有する意思」があるとは認められません。
②満期まで所有する意思と能力があること
満期まで所有することを立証するためには、取得時点においてその意思と能力について文書で明らかにしておくことが考えられます。すなわち、満期まで所有する能力があることを立証するためには、取得時点において満期までの資金繰り、法律などの障害を検討し、能力についても問題がないことを文書などで明らかにしておくことなどが考えられます。
(1)子会社株式及び関連会社株式とは
財務諸表等規則第8条に定められている株式で、他の企業に対して一定の支配力をもしくは影響力を保持することを目的として保有する株式で、配当金を得ることや事業上の支配を行うことが保有目的です。
(2)子会社株式または関連会社株式に該当するか否かの判定に当たっては、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」(委員会報告60号)に留意する必要があります。
端的には子会社とはある企業から意思決定を「支配」されている企業のことであり、関連会社とはある企業から意思決定に「影響」を及ぼされている企業のことです。
(1)その他有価証券とは
その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式または関連会社株式以外の有価証券のことです。その他有価証券の保有目的は長期の資金運用目的や株式持ち合いなど事業目的などさまざまです。
いわゆる持ち合い株式がその他有価証券に分類されるのは持ち合い株式をどう定義するのかは非常に難しいので、他の定義(売買目的有価証券など)を明確にすることにより、「その他」に分類せざるを得なかったということです。
(2)その他有価証券の実務
「その他」というと,一見すると例外的で,あまり多くは実務で見かけないようなイメージを持ってしまいそうですが,「その他有価証券」が,実務では最も多く目にする有価証券です。
「売買目的有価証券」,「満期保有目的の債券」や「子会社株式及び関連会社株式」とするためには.前述したとおり厳格な要件を満たす必要がありますが.それらの要件を満たさない有価証券がすべてこの「その他有価証券」に該当することになるためです。
例えば以下のような有価証券が「その他有価証券」として区分されます。
・時価の変動で利益を得る目的で保有しているが,「売買目的有価証券」の要件を満たしていない有価証券
・満期まで保有する意思が明確とはいえない国債や社債等の債券
・持合い株式
なお、持ち合い株式は、現在では「政策保有株式」とよばれ、その弊害と課題が指摘されていることから、有価証券報告書等で開示対象となっています。
(1)有価証券の保有目的区分は正当な理由がなく変更することはできません(実務指針80)。変更が認められるのは次の4つに限定されます(従前の基準)。
①資金運用方針の変更または特定の状況の発生に伴って、保有目的区分を変更する場
合
・その他有価証券 →売買目的有価証券
・売買目的有価証券 →その他有価証券
・満期保有目的債券 →売買目的有価証券・その他有価証券
②金融商品会計実務指針により、保有目的区分の変更があったとみなされる場合
・満期保有目的債券 →売買目的有価証券・その他有価証券
③株式の追加取得または売却により持分比率が変動したことに伴い、子会社株式または関連会社株式区分から他の保有目的区分にまたはその逆の保有目的区分に変更する場合
・売買目的有価証券・その他有価証券 →子会社・関連会社株式
④法令または基準等の改正または適用により、保有目的区分を変更する場合
(2)有価証券保有目的変更の開示
当該事業年度中に売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び 関連会社株式並びにその他有価証券の保有目的を変更した場合には、その旨、変更の理由及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を注記しなければならない。