企業が財務報告を行う制度等としては次のものがあります。
(1)法定開示
①金融商品取引法による開示
②会社法による開示
(2)適時開示
証券取引所の要請よる決算短信(連結、四半期)の公表等
(3)任意開示
①IR活動
IRとは、インベスター・リレーションズのことで、投資家向けの企業広報活動を意味します。
②機関投資家・アナリストなどへの説明会
企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確保すること等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もつて国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする(1条)。
(1)投資性の強い金融商品に対する横断的な投資家保護法制の構築
(2)開示制度の拡充・充実
(3)取引所の自主規制機能の強化
(4)不公正な取引等に対する規制の厳格化
(1)投資家は自己の判断に基づき投資の意思決定を行う(自己責任)。
(2)投資家が投資の意思決定を行うためには投資判断資料として企業は投資家等に対して財務諸表を開示する必要がある。
(3)企業が開示した財務諸表の信頼性を担保するために監査法人等の監査が行われる(財務諸表監査、内部統制監査)
(1)企業内容等に関する開示制度
①発行開示制度
・有価証券の1億円以上の募集または売出を行う企業は、有価証券届出書または発行登録書・発行登録追補書等により、発行する有価証券の内容およびその有価証券の発行者の事業内容や財務状況等を開示する。
・有価証券届出書等と同様の内容を記載した目論見書を投資者に直接交付する
②継続開示制度
・流通性を有する有価証券の発行者の事業内容や財務状況等を定期的に有価証券報告書および四半期報告書、内部統制報告書により、臨時的に臨時報告書、自己株式買付状況報告書に開示する。
(2)公開買付制度(TOB)
①他社株の公開買付の開示制度
・M&Aなどで他社の支配権を獲得することを目的に所有割合が1/3以上になるような場合には公開買付制度の規制対象となる。
・買付後の所有割合が2/3以上になる場合には、公募された株式の全部を買い付ける義務を負う
②自社株の公開買付の開示制度
自社株の公開買付を行う場合にも買付に係る情報開示が求められています。
(3)大量保有報告書
①上場会社の発行済株式総数の5%以上の株式を保有することとなった者は大量保有報告書を提出する。
②大量保有報告書を提出している者は、その現状および変動状況を報告する。
③大量保有報告書のEDINETによる提出義務づけ
(1)主に証券取引所に既に上場している会社が金融商品取引法第24条に基づいて作成・提出する財務書類です。
(2)作成様式は企業内容等の開示に関する内閣府令に規定が置かれています。
1.企業情報
(1)企業の概況
(2)事業の状況
(3)設備の状況
(4)提出会社の状況
(5)経理の状況
①連結財務諸表等
②財務諸表等
有価証券報告書はインターネットの「EDINET」サイトから誰でも無料で入手できます。
【有価証券報告書と四半期報告書の開示項目】
会社法、会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則
(1)金融商品取引法の財務諸表との差異
会社法の委任を受けて定められた会社計算規則は金融商品取引法の委任を受けた定められた財務諸表等規則と矛盾しないように計算関係書類の様式が定められており、かつ、一般に公正妥当と認められる会計基準および会計慣行をしん酌する(会社法614)とされています。
そのため、金融商品取引法の要求に従って作成する財務諸表と計算書類の間では大きな差異がなく、財務諸表を簡略化したものが計算書類となっているといえます。
(2)会社法特有の計算規定
株式会社では、原則として、会社財産が会社債権者に対する唯一の担保となることから、会社債権者保護のために会社財産を不当に社外流出することなく、確保できるような規定をおいています(分配可能な配当財源規制など)。
(3)税法との関係
法人税法は確定決算主義を採用しているため、会社法に基づく会社の計算が法人税法のもとでの課税所得の計算に影響を受けることもあります。
株主有限責任制度では、株主は自分の出資した金額以上の責任を負わず、株主が債権者に無制限の責任を負うことはなく、債権者の唯一の担保は会社財産だけとなります。
そのため、会社法では配当可能限度額などを設けることにより、不当に会社財産が社外に流出し、債権者保護が損なわれることのないように規定をおいています。
例)減資における債権者保護手続など
(1)大会社・大会社以外の会社
①大会社
資本金5億円以上、または、負債の合計額が200億円以上の会社
大会社には会計監査人の会計監査が義務づけられています。
②大会社以外の会社
資本金が5億円未満、かつ、負債の合計額が200億円未満の会社
(2)公開会社・非公開会社
①公開会社
株式譲渡制限株式を発行していない会社
②非公開会社
公開会社以外の会社
(1)会社法ならびに会社計算規則で作成が要求される計算書類は貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、附属明細書です。
また、計算書類には連結計算書類と臨時計算書類などもあります。
(2)計算書類については会計監査人および監査役の監査を受けます。
附属明細書には次の事項を記載します
(1)有形固定資産明細及び無形固定資産明細
(2)引当金の明細
(3)販売費及び一般管理費の明細
(4)会社計算規則112条1項ただし書の規定により省略した事項がある場合には当該事項
(5)貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書および個別注記表の内容を補足する重要な事項
主な記載項目は次の通りです。
(1)継続企業の前提に関する注記
(2)重要な会計方針に関する注記
(3)会計方針の変更に関する注記
(4)表示方法の変更に関する注記
(5)会計上の見積りの変更に関する注記
(6)誤謬の訂正に関する注記
(7)貸借対照表等に関する注記
(8)損益計算書に関する注記
(9)株主資本等変動計算書に関する注記
(10)税効果会計に関する注記
(11)リースにより使用する固定資産に関する注記
(12)金融商品に関する注記
(13)賃貸等不動産に関する注記
(14)持分法損益等に関する注記
(15)関連当事者との取引に関する注記
(16)1株当たり情報に関する注記
(17)重要な後発事象に関する注記
(18)連結配当規制適用会社に関する注記
(19)その他の注記
なお、会社類型によって、上記の項目の一部が省略することができます。
①株主という強者に対して債権者という弱者を守ろうとする(例:資本金、配当制限など)
②利益の処分可能生(配当力)を重視する
そのため、期末に1億円の有価証券の時価が2億円に上昇しても金銭の裏付けのない評価益は計上しない(取得原価主義、時価主義の否定)。
①株主・投資家に対して、この会社はどれだけ儲ける力があるかを開示しようとする
②そのため、期末に1億円の有価証券の時価が2億円に上昇したら、評価益として1億円計上しようとする
(1)証券取引所に上場している会社は会社法、金融商品取引法による企業内容開示の他に証券取引所による企業内容開示も行います。証券取引所による企業内容開示で最も重要なのが適時開示規則であり、会社に関わる様々な決定事実(株式の発行、資本の減少等)、会社に関わる様々な発生事実(主要株主の異動、主要取引先との取引停止等)などの適時開示(タイムリーディスクロージャー)が求められています。
なかでも最も重要視されているのが決算短信の開示です。
(2)適時開示情報閲覧サービスでは、東京証券取引所等の各証券取引所の上場会社が開示した情報を、閲覧することができます。
(1)決算短信とは
決算短信は報道機関に決算を発表する慣習と、証券取引所の要請により1974年にスタートしたものです。上場企業の決算担当者は決算短信を証券取引所に提出した後、証券取引所の記者クラブで決算短信を資料として配布し、決算発表を行うのが通例となっています。
決算短信には年度決算の際の決算短信、四半期決算に際しての四半期決算短信があります。
(2)決算短信を見るには
決算短信は、東京証券取引所がHPで運営する「適時開示情報閲覧サービス」で閲覧することができます。
東証のHPでは東証以外の取引所に上場する企業の決算短信を閲覧することができます。ただし、企業が開示後30日間のみです。
その後は、企業のHPのIRのページで見ることになります。
(1)情報開示の迅速性
公開会社は投資家の投資判断に資するため、証券業協会や取引所の要請により決算内容を決算日からおおむね45日以内に、「決算短信」で公表することになっています。
そのため、有価証券報告書や計算書類の開示と比較して1ヶ月以上も早く決算情報を入手でき、タイムリーな分、注目度も高いといえます。
ただし、30日以内の発表が望ましいとされ、多くの企業が30日前後で決算短信を発表しています。
2)次期の業績予想
業績予想のような「予想値」を公表しているのは、決算短信だけです。業績予想の内容としては売上高、経常利益、当期純利益、1株あたり当期純利益に加えて、営業利益などがあります。
業績を予想しているのは経営者であり、業績予想には経営者のみしか知り得ない情報が入っているため、決算短信の業績予想を見ることによって、投資家は自らの業績予想と経営者が考えている業績予想との情報格差を知ることができます。
ただし、2012年3月決算から業績予想の開示は事実上、行わなくてもいいとされました。