(1)耐用年数とは
耐用年数とは固定資産を利用する使用可能年数のことです。本来であれば企業は使用する固定資産の使用可能年数を合理的に見積り、減価償却計算を行う必要がありますが、実務上は税法の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって耐用年数を使用しているケースが多いと考えられます。
(2)耐用年数の決定(会計)
耐用年数とは、有形固定資産の見積使用可能期間であり、物質的減価と機能的減価の双方を考慮して、各企業が自社の実情に応じて自主的に決定する必要があります。
①物質的減価
使用による減耗・摩耗、時の経過に伴う自然老朽化を発生原因とする減価
②機能的減価
発明・新技術の発見等による陳腐化、産業構造の変化等に伴う経済的不適応化を発生原因とする減価
(3)耐用年数の変更
耐用年数の変更は会計上の見積の変更に当たり、会計方針の変更には該当しません。
(4)IFRSの取扱い
IFRSでは固定資産の経済的実態に応じて耐用年数を決めることとしており、税法耐用年数と経済的実態が乖離していれば今後耐用年数の見直しが必要となると考えられます。
(5)耐用年数と減損損失
耐用年数が経済的実態に比較し長すぎると減損損失の計上の可能性がでてきます。
税法上、償却限度額を計算するときの耐用年数は、「減価償却資産耐用年数等に関する省令」に定められている年数に従います。通常の材質・構造のもので、かつ、通常の維持管理が行われることを前提とした平均的な年数が省令で定められており、この年数を用いることが原則であり、企業が任意に耐用年数を見積もることは税法上は認められません。
そのため、税法上の耐用年数を「法定耐用年数」と表現することがあります。
一方、企業会計上の取扱いですが、日本公認会計士協会の監査・保証実務委員会実務指針第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」によれば、「耐用年数及び残存価額に関しては、本来であれば各企業が独自の状況を考慮して自主的に決定すべきものである。
したがって、資産を取得する際には、原則として適切な耐用年数及び残存価額を見積もり、当該見積りに従って毎期規則的に減価償却を実施することが必要である。
しかしながら、多くの企業が法人税法に定められた耐用年数を用いており、また同様に残存価額の設定についても、多くの企業が法人税法の規定に従っているのが現状である。
このような事情に鑑み、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理する場合においては、企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができる。
法人税法に定める耐用年数の改正に従って耐用年数を変更した場合も、その変更が明らかに実態と相違する等の事実が認められない限り、耐用年数を合理的なものにするための変更として取り扱うことができる。」としています。
現状では、税法の強行法規に鑑み、多くの企業が税法耐用年数を用いて減価償却計算を実施しています。
企業は適切な製品原価計算等を行う目的のために自らが定めた年数で減価償却を行う例もありますが、その場合には企業が会計上作成する財務諸表はその耐用年数で減価償却費を計上しても、税務申告書を作成する場合には申告調整で会計と税務の減価償却費の差額を調整することになります(会計上の減価償却費の方が過大な場合)。