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資本連結


前号までで、連結財務諸表は合算と修正消去の手続を経て作成され、合算対象となる子会社(連結子会社)はどのような会社が対象となるのかについて解説してきました。

そこで、今回からは修正消去の話となりまして、その初めがこれからお話しする資本連結の話となります。

資本連結とは

親会社は子会社に出資しますと出資分は親会社においては子会社株式(関係会社株式)として貸借対照表の資産の部に表示され、一方、子会社においてはこの出資分は資本(資本金・剰余金)の一部を構成するものとなります。

このように親会社の子会社への出資は親会社と子会社の両方の財務諸表に計上されますので、企業グループ全体からみれば内部取引となり、連結財務諸表上は相殺消去の対象となります。

これが資本連結といわれるものです。

資本連結のパターンは親会社の子会社株式取得の状況によって様々ですが、次のポイントにより資本連結のパターンを分類できます。

(1)親会社は子会社の株式を何%所有して子会社としているのか(子会社に他の株主はいるのか)。

(2)親会社は子会社株式を一括して取得したのか、それとも段階的に取得したのか(例えば20%ずつ3年間で取得したなど)

(3)親会社は子会社株式取得に際して「のれん代」(営業権)などを織り込んで取得対価を支払っているのか。

(4)子会社株式の取得は子会社とする時点か、子会社とした後の取得(支配獲得後の取得)なのか

親会社は子会社の株式を何%所有して子会社としているのか

このとき、2つのケースで説明しますと、

(1)親会社が子会社株式を100%取得した場合、取得価額は1500のケース

今、親会社と子会社の貸借対照表が下記のようだったとします。

親会社貸借対照表
____________________
資産       4000  |資本金 3000
子会社株式    1500  |剰余金 2500

子会社貸借対照表
____________________
資産    1500  |資本金 1000
.               |剰余金      500

このケースは一番簡単で、連結財務諸表作成上は親会社の貸借対照表に計上されている子会社株式と子会社の資本を相殺消去します。

仕訳  借方:(資本金)1000    貸方:(子会社株式)1500
.                          (剰余金) 500

この結果、連結貸借対照表は次のようになります。

連結貸借対照表
____________________
資産 5500    |資本金 3000
.               |剰余金 2500

上の連結貸借対照表では資産は「親会社分+子会社分」となっているのに対し、資本は親会社分だけで子会社分は相殺消去されていることを確認してください。

(2)親会社が子会社株式を80%取得した場合、取得価額は1200のケース

今、親会社と子会社の貸借対照表が下記のようだったとします。

親会社貸借対照表
____________________
資産       4000  |資本金 3000
子会社株式    1200  |剰余金 2200

子会社貸借対照表
____________________
資産    1500  |資本金 1000
.                 |剰余金  500

このケースでは親会社以外の株主が子会社に存在することになり、その外部株主の持分をどう取り扱うのかがポイントとなります。
結論から言いますと、外部株主の分は少数株主として一括して取り扱います。
そして、資本連結仕訳は次のようになります。

仕訳  借方:(資本金)1000    貸方:(子会社株式) 1200
.           (剰余金) 500        (非支配株主持分) 300

外部株主は親会社以外ですから20%所有していることから、少数株主持分は300(=子会社の資本等1500×20%)と計算されます。

この結果、連結貸借対照表は次のようになります。

連結貸借対照表
____________________
資産 5500   |非支配株主持分  300
.              |資本金    3000
.              |剰余金    2200

(1)の連結貸借対照表に加えて、非支配株主持分が貸借対照表に登場していることを確認してください。

親会社は子会社株式取得に際して「のれん代」(営業権)などを支払ったケース

親会社が既存の会社を買収することがよくあります。

このとき買収された企業が卓越した製造技術、販売網などの決算書に計上されていない「強み」を持っていた場合、買収側の企業はその強みを見越して買収価額を算定することになります。

この部分が俗にいう「のれん」といわれるものです。

このケースでも具体的な数字を使った説明してみましょう。

親会社が子会社株式を100%取得した場合で、子会社の資本等は1500だが取得価額は2000のケースを想定してみます。

今、親会社と子会社の貸借対照表が下記のようだったとします。

親会社貸借対照表
____________________
資産       4000  |資本金 3000
子会社株式    2000  |剰余金 3000

子会社貸借対照表
____________________
資産    1500  |資本金 1000
.                                   |剰余金  500

このケースでは子会社株式の取得価額2000と子会社の資本等1500の差額500をどう取り扱うですが、連結財務諸表規則ではのれん部分は連結調整勘定として表示することになります。

仕訳  借方:(資本金)   1000  貸方:(子会社株式)2000
.                                (剰余金)    500
.                                (連結調整勘定)500

この結果、連結貸借対照表は次のようになります。

連結貸借対照表
____________________
資産        5500 |資本金 3000
連結調整勘定      500 |剰余金 3000

上の連結貸借対照表では連結調整勘定が連結貸借対照表の資産の部に計上されていることを確認してください。

連結調整勘定は20年以内で償却します(連結財務諸表原則 三.投資と資本の相殺消去)。

なお、かっては連結調整勘定には子会社の資産の含み益が含まれることがありましたが、連結ルールの改正で子会社を連結する際には資産および負債を時価評価することが原則とされましたので、資産の含み益などは現在では連結調整勘定には含まれないことになったといえます。

資本連結のその他のポイント

今回は説明しませんでした資本連結のポイントには次のものがあります。

(1)子会社を連結する際の資産および負債の時価評価

(2)子会社株式を売却した場合の資本連結

(3)子会社株式を段階的に取得した場合の資本連結

(1)と(2)の資本連結のポイントは、今後、連結財務諸表の基礎知識(応用編)を解説する際には説明したいと考えています。