今回は固定費と変動費の解説の続きになります。
製品の原価がいくらなのかという話を日常的にされると思います。
ただ管理会計の専門家からすると、「この製品のコストはいくらですか?」とだけ尋ねられた場合、答えはありません。
つまり、正確な原価などあり得ないということです。
なぜ正確な原価があり得ないかというと、そこに「固定費」が発生するからです。
固定費によって原価が変わることを、ラーメンの原価を例に説明します。
たとえばこのラーメンの麺の原価が100円だとします。
ラーメンが1杯出れば麺が1つ出ますし、10杯出れば10個出てきます。
原価がこれだけならばとても簡単ですが、ラーメンを作るためにはお店も借りなければいけないですし、人も雇わなければいけません。
人件費や賃借料は固定費ですので、その固定費をどうやってラーメンの原価に含ませていくかがポイントです。
もし店舗の賃借料が20万円だとすると、1杯の原価は、たとえばそれを利用者数で割るなどして計算することになります。
つまり、固定費を利用者数で割って1杯あたりの固定費を計算し、それを1杯あたりの変動費にプラスして、ラーメンの原価を計算するということです。
具体的に、利用者数1,000人と5,000人のケースで原価の違いを確認します。
<ケース1:利用者数1,000人の場合>
まず変動費は、麺の100円です。
一方、固定費は、賃借料20万円を1,000人で負担していると考えますので、20万円÷1,000人で、1杯あたり200円になります。
したがって、1杯あたりのラーメンの原価は変動費100円と固定費200円を合わせた300円になるということです。
<ケース2:利用者数5,000人の場合>
利用者数が5,000人の場合、固定費は20万円÷5,000人で1杯あたり40円になります。
したがって、ラーメンの原価は麺の100円と変動費40円を合わせて1杯あたり140円です。
300円も140円も、どちらも正しい原価になります。
このことから、先程のとおり「このラーメンの原価はいくらですか?」とだけ尋ねられても答えようがないのです。
このように、原価が事後的に決まるということを理解されていないことが非常に多いです。
原価がいくらなのかわからなければ、いくらで売れば利益が出せるのかもわからなくなります。
管理会計を理解するうえでは、やはり変動費と固定費が大事なのです。
固定費があることによって、原価は1つにはなりません。
そしてその固定費を何で分けるかということを、十分理解していただきたいと思います。