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減損損失計上後の処理


減損損失計上後の処理など

減損会計の処理は次のステップで行っていきます。

(1)減損の兆候の認識
(2)減損損失の認識
(3)減損損失の測定

そして、今号は減損損失を計上した後のお話です。

●減損損失処理後の会計処理

減損損失計上後は、資産グループについて認識された減損損失は、減損処理後の減価償却費計算や売却損益の計算を適正なものとするために、資産グループを構成する資産に配分します。

そして、減損損失切下げ後の帳簿価額にもとづき減価償却計算を行います。

●減損損失の戻入れ

いったん減損損失を計上したものの、その後収益性が回復し、回収可能価額が増加した場合に過去に計上した減損損失を戻し入れて固定資産の帳簿価額を増額させるかどうかが問題となります。

この点について国際会計基準は減損の戻入れを認めているようですが、我が国の基準は減損の戻入れは認めていません。

「本基準においては、減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから、減損損失の戻入れは行わないこととした。」

(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書)としています。

●減損損失を計上した場合の開示

1.貸借対照表での表示(減損会計適用指針57)

減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、以下のように行います。

(1)原則として、減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式(直接控除形式)で表示します。

(2)ただし、減価償却を行う有形固定資産については、当該資産に対する減損損失累計額を、取得原価から間接控除する形式(独立間接控除形式)で表示することもできます。

2.損益計算書での表示

減損損失は特別損益の部に表示します。

3.注記(減損会計適用指針58)

重要な減損損失を認識した場合には、損益計算書(特別損失)に係る注記事項として、以下の項目を注記します。

貸借対照表では上記のように直接控除方式で表示されますと、減損損失の額などが投資家などの目に触れにくくなりますので、注記は非常に重要な情報となります。

(1)減損損失を認識した資産又は資産グループについては、その用途、種類、場所などの概要

(2)減損損失の認識に至った経緯

(3)減損損失の金額については、特別損失に計上した金額と主な固定資産の種類ごとの減損損失の内訳

(4)資産グループについて減損損失を認識した場合には、当該資産グループの概要と資産をグルーピングした方法

(5)回収可能価額が正味売却価額の場合には、その旨及び時価の算定方法、
回収可能価額が使用価値の場合にはその旨及び割引率(第141項参照)

この注記情報で注目すべきは(5)の時価の算定方法や割引率です。特に割引率は企業がそれぞれどのような割引率を設定して減損会計処理を行ったかが開示され、かなり重要性の高い情報となると考えられます。

●減損会計と税務の乖離

これまで述べてきましたことは会計基準の話でしたが、会計で計上した減損損失が税務上も固定資産の評価損として認められるかはどうかが大きな問題となります。

この点に関しては次の点などから減損損失が税務で認められることは少ないのではないかと考えられます。

(1)税務が認める評価損の範囲が限定的であること(法人税法施行令68条3号)

(2)資産の評価損を規定した法人税法33条2項《資産の評価損の損金算入》の規定における時価についても「当該資産が使用収益されるものとしてその時において譲渡される場合に通常付される価額による」と限定されていること(法人税法基本通達9-1-3)。

この結果、企業が減損損失を計上した場合、税務との乖離を調整するために税効果会計の処理の検討も必要となります。

また、税務上、否認された減損損失は償却費として損金経理した金額に含まれることになります(法人税基本通達7-5-1 (5)注書)