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減損損失の測定

 減損の認識段階で減損が認識された固定資産グループについて、減損の測定を行っていきます。

減損の測定のポイント

・割引後のキャッシュ・フローを用いる
・損失額を算定するため、厳密な計算が必要とされる。

回収可能価額とは

 回収可能価額とは、減損会計特有の概念で資産または資産グループの「正味売却価格」と「使用価値」とのいずれか高い金額をいいます。
(1)正味売却価額
  正味売却価額とは、資産または資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される額をいいます。

 正味売却価額=資産等の時価-処分費用見込額

 時価の定義について、減損会計基準は「公正な評価額」をもって時価とするとしています。公正な評価額とは、通常の場合において観察可能な市場価格をいい、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額をいうこととされています。
   不動産については不動産鑑定評価が基づくこととされています。不動産以外の固定資産については、コスト・アプローチ(再調達原価)やマーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどを選択することになります。
 
(2)使用価値
 資産等の継続的使用と使用後の処分によって生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値を意味します。
使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、企業の固有の事情に照らして、合理的で説明可能な仮定および予測に基づいて見積もることとされています。

(3)回収可能価額について、「正味売却価格と使用価値とのいずれか高い金額」としているのは、経営者はその資産について正味売却価格の方が使用価値より高ければ資産売却を行い、正味売却価格に相当する金銭を入手でき、また、使用価値の方が正味売却価格より高ければその資産を使用し続けることにより、使用価値に相当するキャッシュ・フローを得ることができます。
 つまり、経営者は正味売却価格か使用価値のいずれか高い方を選択できるためです。

使用価値の算定

(1)割引率
 使用価値の算定に用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とします。

(2)割引率とは
  使用価値の計算に使用できる割引率としては次のものが考えられます(適用指針45項)。①企業における当該資産または資産グループに固有のリスクを反映した収益率
例えば、ハードルレートといわれるレートが該当します。ハードルレートとはいわば「足きり」レートのことで、企業が投資意思決定を行う際に求める最低限のレートのことです。このようなレートを社内で決めている場合には,そのレートを使用することができます。
収益率ですので、資本調達コストを含んだ上での投資リターンになるため、高くなりがちですので通常はこの収益率を割引率に用いることはないと考えます。

②企業に要求される資本コスト
 資本コストとは資金調達コストのことで、よく使われるのはWACC(加重平均資本コスト)といわれるものです。また、WACCを計算するときにCAPM(資本資産価格形成モデル)が使われ、β値などが登場してきます。
 資本コストを利用するのは、これだけ調達コストがかかっている資金を利用して設備投資を行っているのだから、最低限その調達コストは稼がなければ投資は失敗だと判断されると考えるからです。
 要は資本調達コストです。資本調達コストですので、基本的には低めに算出され、なおかつ、客観的に求めることができますので実務上はこの資本コストを割引率に設定することが多いと思われます。一般的には資本コストは5%前後ですので、割引率が5%前後と有価証券報告書で減損損失の注記開示されている場合にはこの資本コストを割引率で使用していると考えればよいでしょう。

③資産または資産グループに類似した資産または資産グループに固有のリスクを反映した市場平均と考えられる合理的な収益率
貨貸物件など,市場に類似の資産が多くあり,平均的な収益率が把握できる場合は,それを使用することができます。

④資産または資産グループのみに裏付けられた、いわゆるノンリコースとして大部分の資金調達を行ったときに適用されると合理的に見積られる利率
 ノン・リコース(ローン)とは金融機関がある企業が行う投資案件に融資したときに、その投資が失敗して返済に窮することがあっても、企業自体に返済義務の履行を求めることができない融資です。
逆にいえば,ノンリコース・ローンの利回りとは,資金の借り手の財政状態にかかわらず,その物件・プロジェクトの収益力・売却価値だけで資金調達を行うことができる利回りということができます。
また、これらの4つを総合的に勘案したものを用いることも可能とされています。

(3)将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクの取扱い
 このようなリスクについての取扱いには次の2つの方法があります。
 ①将来キャッシュ・フローに反映させる
  例えば見積もったキャッシュ・フローを8掛けして利用するということです。

 ②割引率に反映させる。
  例えばリスクプレミアムを上乗せします。