EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)とは、税引後営業利益から総資本コストを差し引いたものです。
つまり、「企業が税金を支払った後(税引後営業利益)に、株主が期待しているリターンと債権者が要求している金利を支払った(資本コスト)上で、さらにどれだけ上回って利益(経済価値)を生み出したかを表す指標ということです。
EVAは次の算式で算定されます。
=NOPAT(税引後営業利益)-投下資本×WACC
=(NOPAT/投下資本-WACC)×投下資本
≒(投下資本利益率-資本コスト)×投下資本
NOPAT(Net Operating Profit After Tax)の「Operating Profit」とは営業利益という意味であり、「Net」とは減価償却費を差し引いた後という意味です。
換言すれば、EVAは「(投下資本利益率-資本コスト)×投下資本」と表されるため、投下資本利益率(ROIC)がプラスであっても、資本コストを上回らない限り、EVAはマイナスとなってしまいます。
「投下資本利益率-資本コスト」のことをEVAスプレッドということがあります。
EVAの特徴としては次の点が挙げられます。
(1)EVAは単年度の業績評価指標です。そのため、ある年度で大規模な設備投資を行った場合、その年度の投下資本の額はそれだけ膨みますが、NOPATは増えないので、EVAは悪化します。
(2)EVA増加と株価との連動性が1株あたり利益よりも高い(米国の経験則)。
(3)利益という会計上のゆがみのある数字ではなく、企業価値をより正確に表した指標であるといえます(「会計上のゆがみ」の調整後)。そのため、NOPATは厳密には税引後営業利益とは異なります。
(4)資本調達コストを反映しているために、収益性だけではなく、資産・負債の効率化も促進します。
(5)EVAは企業全体だけではなく、事業部や新規投資といったものにも適用可能であり、マネジメントツールとしても活用できます。
(6)市場の評価指標を事業部等の企業内部に浸透させることができ、事業部長の目を企業外部に向けさせるという効果があります。
EVAを高めるには次の方法があります。
(1)収益性改善
投下資本の金額を変えることなく、NOPATを改善する。
(2)高付加価値投資
資本コストを上回るリターンを生み出す新規事業への投資をする。
(3)投下資本の削減
収益性の低い資産を売廃却する。
(4)事業再編
資本コストを下回る事業、プロジェクトから撤退する。
(5)資本コストの引下げ
資本コストを有利子負債の増加、IR活動等により引き下げる。
企業内容・戦略の広報による理解促進、風説の流布(ゴシップ等)の解消を図る。
・NOPATは「税引後営業利益」としましたが、これを事業利益(=営業利益+受取利息・配当金)とすることもあります。
・「EVAは事業部にも適用可能」と書きましたが、事業部がインベストメントセンターではない、つまり投資権限を持たない組織であれば事業部の企業価値への貢献度は測定できますが、事業部ならびに事業部長の業績評価には向いていません。
・EVAを事業部にも適用するならば、社内振替価格、社内金利・社内資本金等のルールを明確かつ納得性の高いものにしておく必要があります。
・なお、EVAはスターンスチュワート社によって紹介されたものであり、同社の登録商標となっています。1980年代に米国コカコーラ社が導入し、業績を伸ばしたことにより、一躍有名となったものです。
日本企業ではこのEVAを独自にアレンジして使用する企業が多いといわれています。