(1)貸借対照表は企業の一定時点(決算日)における財政状態を明らかにするための財務表です。
資産とは企業資本の運用形態を示し、負債は株主以外の者から調達した資金をいい、資本は株主から調達した資金および企業が稼得した利益の留保からなり、負債と資本はともに企業資本の調達源泉を示します。
(2)資本の部は上記のように払込資本と留保利益で構成されていましたが、「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準5号、2005年12月)により、評価換算差額などを含んだ「純資産の部」として表示されるようになりました。
(1)損益計算書は一事業年度の成果を表しますが、貸借対照表は会社設立から直近事業年度の成果までの累積した資産や負債の状況や成果を表します。
(2)負債および純資産は企業がどのような資金を調達したかを示し、資産サイドは調達した資金をどのようなかたちで運用しているかを示します。
①売上債権の回収可能性
売上債権はすべて回収できるとは限りません。そうした回収の懸念に備えて貸倒引当金を計上するのですが、あくまで過去の実績等に基づいて計上になってしまいます。
②棚卸資産の販売可能性
棚卸資産はすべて販売できるとは限りません。そのため、現在の会計基準は時価が取得原価より下落したならば、時価評価しなければならないとしています。
③有形固定資産の生産可能性
有形固定資産はすべて販売できる製品等を生産できるものとは限りません。
なお、減損会計の適用で儲けを生まない有形固定資産等は儲けを生む金額まで評価減されます。
④のれんの収益力
のれんとは100億円の価値のある企業を120億円で買収するときの差額20億円のことです。
のれんが生じるのは、ある企業を買収し、自社と一体経営を行うことでいわゆる「シナジー効果」が働くとされているためですが、シナジー効果が働く、換言すればのれんに収益力があるかどうは不明です。
⑤目に見えない資産
明確に評価できる財産しか貸借対照表には計上されません。
そのため、企業がいくら他社に比べて優れた人材、商圏、顧客名簿、研究開発力を持っていてもそれは貸借対照表には資産として計上されません。
ただし、そうした目に見えない資産を持つ他社を買収してきたときにはのれん等として貸借対照表に計上されます。
⑥資産の価額
貸借対照表に計上されている資産の価額は基本的には取得価額です。
そのため、資産価値を表すということではありません。
また、資産を売却したら売却益もしくは売却損がでる可能性も少なくありません。
なお、減損会計の適用で儲けを生まない有形固定資産等は儲けを生む金額まで評価減されていると考えられます。
ただし、減損会計は「損だし」の会計処理ですので、100億円で建設した工場が120億円の儲けを生むとしても120億円で評価することはありません。
⑦利益剰余金と現金
利益剰余金が1000億円あっても、企業に1000億円の現金預金があるとは限りません。
1000億円の現金預金を元手にして建物・工場などの有形固定資産、有価証券購入で使ってしまっているということです。
⑧利益と現金
今年度の利益が10億円だとしても、企業には1億円しか現金預金がないこともあり得ます。
現金預金は事業年度を通じて10億円近く入ってきているのしょうが、その現金は借入金の返済、固定資産の購入などで期末にはなくなっているというわけです。
また、利益には掛取引による利益も当然ながら含まれているために、期末までには利益として計上されたが、売掛金として残っている部分もあります。
①借入金100億円
貸借対照表の負債に借入金100億円とあれば、企業は間違いなく100億円返済しなければなりません。
ただし、社債の場合にはそうならない場合もあります。
②訴訟の影響
企業が訴訟を起こされていて将来敗訴する可能性があり100億円お金が出ていく可能性があっても、可能性があるだけでは貸借対照表には計上されません。
③債務保証
企業がグループ会社の借入金100億円の債務保証をしていても、通常は貸借対照表を見てもわかりません。
注記を見る必要があります。
④資本金100億円
貸借対照表の純資産の部に資本金100億円と表示されていても、それは会社設立時やその後の増資時にそれだけお金を株主から出資してもらったという「過去の事実」を表すだけです。
現在、100億円のお金があるとは限りません。