コーポレート・ガバナンスという言葉は何年か前から,企業が不祥事を起こすたびに耳にするようになりました。コーポレートガバナンスは「企業統治」と訳され,「企業は誰のものか」という内容の言葉として,マスコミ等では述べてられていますが,正直言いましてそう言われてもピンときません。そこで,主観が混じり,専門家からみれば妥当な表現にならないかも知れませんが,試行錯誤的にコーポレート・ガバナンスについてまとめていきたいと思います。
(1)経営者の独走・暴走を株主がチェックでき,阻止できること
(2)組織ぐるみの違法行為をチェックでき,阻止できること
(3)企業理念を実現するために,全役員・従業員の業務活動が方向づけられていること
(1)経営の透明性,健全性,遵法性の確保
(2)各ステークホルダーへのアカウンタビリティー(説明責任)の重視・徹底
(3)迅速かつ適切な情報開示
(4)経営者並びに各層の経営管理者の責任の明確化
(5)内部統制の確立
(1)委員会設置会社の選択
(2)社外取締役,社外監査役の増員
(3)内部統制の仕組みの強化
(4)不公正な取引の規制・開示
(5)社員の行動規範や企業倫理憲章の設定
(6)情報開示体制の確立
(7)法務部の拡充・強化
(8)監査役のスタッフ部門(内部監査室など)の拡充・強化
(9)意思決定の会議体において喧々諤々の議論ができること
(1)経営者の私利私欲
(2)役員・社員の遵法意識の欠如
(3)組織間の情報分断
(4)企業理念の棚上げ,お題目化
(5)予算達成第一主義
(6)ことなかれ主義の蔓延
(7)結論を出せない長時間の会議
内部統制の確立がコーポレートガバナンスの大きな要素となります。ただ,いくら内部統制が整備・運用されたところで,コーポレートガバナンスが確立されるとは限りません。内部統制の基本方針は経営トップが決めることであり,経営トップが決めた「合理的な説明ができない意思決定」についても,起案から承認までのプロセスが会社が定めた稟議規程などの意思決定プロセスにそい,しかるべき各層の承認を得ていれば内部統制上は問題ないからです。
結局のところ,形式が守られているから問題なしとするのではなく,企業の価値を毀損するような意思決定を行うような役職員をその立場から退いてもらうことができるかが問題となるはずです。それがコーポレートガバナンスであり,具体的な例があげれば企業外部からのモニタリングです。そして,そこでいう企業外部とはその企業と利害関係や依存関係が外形的かつ精神的にもないことが条件となります。
企業グループを構成する親会社は子会社の株式を過半数所有していることが通常でしょう。その場合にも独立会社間と同様にコーポレート・ガバナンスを考えることができ,こうしたケースのものを「グループガバナンス」や「子会社ガバナンス」として語られることもあります。
こうした親子会社間のコーポレートガバナンスを議論するとき,問題となるのは「親子上場」です。子会社は株式上場しており,広く株式市場から資金を集めているにもかかわらず,親会社以外の株主(少数株主)の意見を十分に反映した経営ができるかということです。
従来は,親子会社間の株式保有に関してはコーポレート・ガバナンスの問題よりも,企業グループとしての子会社マネジメントの領域として考えられていたような感じがしますが,完全子会社化(親会社が子会社の株式を100%保有すること)などを通じて,その距離感が解消されていくことが増えていくのではないかと考えています。
平成15年3月の証券取引法の改正により,有価証券報告書等の「提出会社の情報」において,「コーポレート・ガバナンスの状況」の項目を新設し,以下の事項を記載することとされました。
平成16年3月期の有価証券報告書から記載が求められることになります。
・会社の機関の内容
・内部統制システムの整備の状況
・リスク管理体制の整備の状況
・役員報酬の内容(社内取締役と社外取締役に区分した内容)
・監査報酬の内容(監査契約に基づく監査証明に係る報酬とそれ以外の報酬に区分した内容)
東京証券取引所は2003年3月1日以降に終了する事業年度に係る決算短信から 「コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及びその施策の実施状況」の記載を義務づけました。具体的な記載すべき項目は次の通りです。
(1)コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
(2)コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況
①会社の経営上の意思決定,執行および監督に係わる経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況
②会社と会社の社外取締役および社外監査役の人的関係,資本的関係または取引関係その他の利害関係の概要
③会社のコーポレート・ガバナンス充実に向けての取組の最近一年間における実施状況