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社会保険業務の基礎知識

社会保険とは

 社会保険は健康保険と、厚生年金保険からなります。なお、労働保険を加えた保険を社会保険(広義)ということもあります。
(1)健康保険
 健康保険とは、日常生活でケガをしたり病気にかかったり、あるいは出産したときに使う医療保険です。 

(2)厚生年金保険
 厚生年金保険とは、主に老後の所得保障の役割を果たす保険です。

社会保険の適用事業所

(1)強制適用事業所
 会社はすべて強制適用事業所になります。
 事業所(個人事業の場合)の従業員が5人以上となった場合には社会保険に加入しなければなりません。

(2)任意適用事業所
 任意適用事業所になるには、事業所で働く人の1/2以上の同意が必要です。

事業所の加入手続

(1)事業所の従業員が5人以上となった場合、社会保険の加入義務が生じます。
 加入義務が生じてじから5日以内に年金事務所で手続きをします。

(2)事前の準備(事業所の加入)
 手続きをする際には、次の書類が必要になります。
 <準備書類>
  ・健康保険厚生年金保険新規適用届
  ・健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
  ・健康保険被扶養者異動届(被扶養者がいる場合)
  ・登記簿謄本や出勤簿、賃金台帳
  ・登記上の本店所在地と実際に事業をしている所在地が異なる場合には、賃貸借契約書
・保険料口座振替申出書
  ・任意適用の場合は、「任意適用申請書」、「任意適用同意書」を提出します。

従業員の社会保険への加入

(1)社会保険に加入義務と対象者
 ①加入義務
  社会保険は雇用保険と違い、役員も加入対象になります。したがって、会社に代表者が1人だけの場合でも、社会保険の加入手続きをしなければなりません。
 ②加入対象
  適用除外者に該当しないかぎり、すべての役員や従業員が社会保険の加入対象になります。
 ③パート従業員
   一定の条件を満たす場合に、加入対象となります。

  ※社会保険への加入あるいは適用除外は、「正社員」か「パートやアルバイトといった名称ではなく、労働時間など就労の実態によって判定します。
   パート労働者が社会保険の被保険者となるかどうかは、労働時間及び労働日数が一般従業員の「おおむね4分の3以上」であるかどうかで決まります。

社会保険の適用除外者

 社会保険の適用除外者は次の人たちです。
 (1)日雇いで雇用される者(1カ月を超えて雇用されるようになったら加入しなければなりません)
 (2)雇用契約期間が2カ月以内の者(雇用契約期間を超えて雇用されるようになったら加入しなければなりません)
 (3)事業所または事務所の一定しない事業に雇用される者
 (4)季節的事業に4カ月以内の期間を決められて雇用される者
 (5)臨時的な事業に6カ月以内の期間を決められて雇用される者

社会保険の被保険者の資格喪失

 被保険者は次の事由が生じた場合、被保険者の資格を失います。
(1)適用事業所を退職した
(2)死亡した
(3)臨時雇用に切り替わるなどにより適用除外となった
(4)事業所が廃止になった
(5)任意適用事業所が任意適用の取消しを認可された
(6)70歳に達した日
(7)75歳に達した日(健康保険) 
 ※資格喪失日は(1)から(5)はその翌日、(6)・(7)はその日となります。

標準報酬月額の決定(改定)

 社会保険料の納付額を算定するベースとなる標準報酬月額の決定改定には次の4つの事由があります。
(1)定時改定
 毎年、4月から6月まで報酬月額を算出しその後の1年間(9月から翌年8月まで)の標準報酬月額を決定するための手続です。

(2)随時改定
 従業員の給与が昇給・減給等による固定的賃金の変動に伴って大幅に変わったときに、毎年1回の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定するための手続です。

(3)資格取得時決定
 従業員採用時において標準報酬月額を決定するための手続です。

(4)育児休業等終了時決定
 育児休業していた従業員が職場復帰したときに給与が減額されたときに、減額された給与に標準報酬月額をあわせるための手続です。
 

定時改定の手続

(1)定時改定とは
 定時改定は会社と従業員が納付する社会保険料の金額を決定するために毎年7月に行う手続です。  
 この手続で作成する文書が「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」で要するに「算定基礎届」といわれるものです。

 「算定基礎届」を作成し、「報酬月額算定基礎届総括表及び附表」を添付し、7月10日までに年金事務所に届出ます。
 そうしますと、後日「標準報酬月額決定通知書」が郵送されてきて、9月分以降の標準報酬月額及び保険料が決まります。

 定時改定で算定された社会保険料に基づき、9月からの社会保険料が決定します。
 通常は9月の社会保険料のうち、従業員負担分は10月給与から控除することが多いとすると、給与に定時改訂後の社会保険料額が反映されるのは10月からとなります。

(2)定時決定の対象者
 7月1日時点で雇用しているすべての被保険者が対象です。
  
 <算定基礎届の対象とはならない従業員>
 ・6月1日以降に社会保険に加入した従業員
 ・6月30日までに退職した従業員
 ・7月、8月、9月に月額変更届を提出する従業員
 ・7月、8月、9月に育児休業等終了時変更届を提出する従業員

 なお、休職中の従業員や、欠勤中の従業員、海外で勤務している従業員は算定基礎届の対象になります。

(3)算定の方法は
 ①1カ月あたりの平均
  届け出は4月、5月、6月に支払った「報酬月額」をもとに作成します。まず、4月からの3カ月間に支払われた 報酬月額の合計額を月数で割り、1カ月 あたりの平均報酬月額を算出します。

 報酬月額には、賃金、給料、手当、賞与などの名称の如何を問わず、会社などが労働の対価として従業員に支払うものすべてが対象となります。
 例えば、現金による支給だけではなく、通勤定期券は報酬月額に含まれます。また、食事、社宅や給与としての自社製品などの現物による支給も本人負担分が一定額 に満たない場合には報酬月額に含まれます。
 また、年3回まで支給される賞与、日当・出張費は報酬月額には含まれません。

 ②社会保険料の決定
 次に、この平均額を社会保険の「保険料額表」にあてはめ標準報酬月額を算出し、社会保険料の納付額を決定します。

 ③賃金支払基礎日数が17日以上ない場合
  基本的には4月から6月の3カ月間に支払われた給与額を使いますが、賃金支払基礎日数が17日以上ない場合には、その月は除外して考えます。
  例えば、5月の賃金支払基礎日数が15日であった場合には、4月と6月の給与額を合計し、2カ月あたりの平均給与額を出して、社会保険料を決定します。

  ※「4月に支払われた給与」ですので、会社が3月分の給与を4月10日に支払った場合、会社にとっては3月給与ですが、4月給与として取り扱います。

  ※賃金支払基礎日数とは
   賃金支払の対象となった日数をいいます。月給制の場合は、1カ月の暦日数が賃金支払基礎日数となります。日給制や時給制の場合には、実際に勤務した日数となります。
   また、月給制でも、欠勤日数分について給与を控除する場合には、暦日数から欠勤日数を差し引いた日数が、賃金支払基礎日数となります。

 ④パートの場合
  賃金支払基礎日数がいずれも17日未満の場合には、15日以上17日未満の月の平均を出して、社会保険料を決定します。いずれの月も、15日未満の場合には従前の等級で決定します。

 ⑤繁忙期で保険料が高くなってしまうときには
 「4月から6月までの3カ月間に受けた報酬の1カ月あたり平均額から算出した標準報酬月額」と、「前年の7月から当年の6月までに受けた報酬の1カ月あたり平均額から算出した標準報酬月額」を比べて、2等級以上差が出た場合、 保険者(年金事務所など)による保険者算定が行われます。

  <保険者算定が可能な場合>
  ・給与の遅配があった場合
  ・休職した場合
  ・ストライキによる賃金カットがあった場合
 ・4月から6月の報酬額が他の月と比べて著しく変動する場合(その差が業務の性質上毎年発生すると見込まれること)

随時改定の手続

(1)随時改定とは
 定時改定で9月からの社会保険料の納付額が決定されてもその後に大幅な給与変動があった場合、社会保険料の納付額と改訂後の給与額とがバランスを欠くことになります。
 そうしたときに随時改定を行い、改訂後の給与に合わせて社会保険料の標準報酬月額と納付額も改定する必要が出てきます。

(2)随時改定を行うとき
 月額変更をするための条件は次の3つです。
 ①従業員の固定的賃金に変更があったときです。
  固定的賃金とは、月給などの基本給や通勤手当など、支給額が毎月変わらない賃金をいいます。残業代(割増賃金)や歩合給など毎月支給額が一定ではない賃金額が変わっても、この条件は満たしません。

 ②給与額に変更があった月から続く3カ月の各月の賃金支払基礎日数が17日以上あることです。
  賃金支払基礎日数とは、賃金の支払いの対象となった日のことです。月給の場合だったら、賃金計算期間の日数(暦日数)が賃金支払基礎日数となります。

 ③賃金額に変更があった月から引き続く3カ月間に支払われた賃金額の1カ月当たりの平均額を、「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」にあてはめた結果、従前の等級よりも二等級以上変わったことです。

(3)随時改定に該当する場合の手続
 ①「健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を届けます
  賃金額に変更があった月から数えて4カ月後に、年金事務所へ届け出ます。

 ②月額変更によって決定した新保険料
  賃金額に変更があった月から数えて、5カ月後の支払給与額から適用されます。

 <具体的説例>
  9月から給与が大幅に変更された場合、9月・10月・11月と変更後の給与が適用されたことで随時改定の要件を満たしますので、12月の社会保険料から改定されます。
 12月の社会保険料が給与から控除されるのは1月となり、それ以後の給与は改訂後のベースの控除がなされることになります。
  
 ※算定基礎届との関係
  4月、5月、6月に固定的賃金に変動があり、月額変更に該当する場合には、算定基礎届の代わりに、月額変更届を年金事務所へ提出します。

賞与を支払ったとき

(1)届出
 賞与を支給したら、5日以内に、年金事務所へ「賞与支払届」と「賞与支払届総括表」を提出します。
 そうしますと、年金事務所から「保険料決定通知書」が送られてきます。
 また、70歳以上の人に賞与の支払いをしたときは、「厚生年金70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」もあわせて提出します。

(2)納付期限
 賞与にかかる社会保険料は、原則、賞与を支払った月の翌月末日までに通常の保険料と合算して納付します。

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