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取引高・債権債務の消去

連結財務諸表は合算と修正消去の手続を経て作成されます。

修正消去の手続は大きく投資と資本の消去と取引の消去に分類できます。

取引の消去は損益計算書項目を中心とした取引高の消去、貸借対照表項目の債権債務の消去にさらに分類することができます。

取引高の消去

連結財務諸表においては連結グループ会社間の取引は内部取引とみなされますので、その取引はなかったものとして消去(相殺消去)の対象となります。

そのため、親会社P社と連結子会社A社とで商品の売買を行った場合には連結財務諸表作成上、次のような消去仕訳を起こします。

借方:(売上高)1000   貸方:(売上原価)1000

なお、実務においては連結グループ会社間の取引高が一致しないこともありえます。

一致しない原因としては次の理由が考えられます。

(1)仕入側において未達取引となっているケース

(2)異なる会計処理方針を採用しているケース
例:販売側は出荷基準で売上計上、仕入側は検収基準で仕入計上

(3)処理もれ(起票もれ)、処理ミス(起票ミス)
 (注)起票:伝票を起こすこと。

取引高が一致しない場合には原則としては販売側と仕入側の両社に調査を求め、その差額を調整するような連結修正仕訳を起票するとことになります。

ですが、実務上は次のような処理を行っていることが多いと考えられます(差額が大きく、財務諸表の信頼性を損なうときは別です)。

(1)親会社の取引高金額により消去

(2)取引高の大きい方の金額により消去

(3)取引高はそのままで、差額をその他流動資産・負債などの勘定に計上

なお、連結グループ会社間の取引が商品取引だけではなく、例えば製造子会社にとっては商品、仕入れた親会社では機械装置という場合もあります。

この場合の取引高の相殺消去仕訳は次のようになります(取引高1000、売上原価800とします)。

借方:(売上高)1000   貸方:(売上原価)800
                (機械装置)200

貸方の「機械装置200」は製造子会社が利益を200計上しており、その利益は内部取引に基づく利益ですから消去しなければならないということです。

債権債務の消去

連結グループ会社間で商品の販売等の取引を行った結果、販売側には売掛金、仕入側には買掛金といった債権債務が生じます。

この債権債務も内部取引により生じたものですので取引高の消去と同様に、消去(相殺消去)の対象となります。

そのため、親会社P社と連結子会社A社とで商品の売買を行った場合には連結財務諸表作成上、次のような消去仕訳を起こします。

借方:(買掛金)1000   貸方:(売掛金)1000

債権債務の消去の場合、上記の仕訳で内部取引が消去され、これで終了かというとまだ続きがあります。

すなわち、多くの企業が売掛金などの貸金に対して貸倒引当金を設定していることを考えますと、売掛金が債権債務の消去により減少した結果、貸倒引当金の調整が必要となるということです。

貸倒引当金の設定方法には貸倒実績率による方法、法定繰入率による方法(中小法人のみ)、個別評価による方法などがありますが、貸倒実績率が1%で貸倒引当金を設定している会社にあっては次の仕訳が加わることになります。

借方:(貸倒引当金)10   貸方:(貸倒引当金繰入額)10

(注)10=売掛金1000×貸倒実績率1%

2つの仕訳を起こして、これで終わりかといいますと、まだ続きがあります。それは何かといいますと、いよいよ登場の税効果会計です。

このケースで税効果会計を考えますと、貸倒引当金10の減少によって将来加算一時差異が生じ、その結果、繰延税金負債が計上されることになります(無税で貸倒引当金計上している場合に限ります)。

といきなり税効果会計を切り出しても話が難しくなるだけですので、理解のためのラフな説明をしますと、次にようになります

(1)連結上、貸倒引当金繰入額が消去され、利益が増加する

(2)その一方、法人税等の金額は変わっていない

(3)そのため、利益増加分に相当する法人税等を計上する必要がある。

(4)よって、次の仕訳を起こし、法人税等を増額させる必要がある。

借方:(法人税等調整額)4   貸方:(繰延税金負債)4
(注)4=貸倒引当金繰入額10×法定実効税率40%

上の説明はこの場面で税効果会計が何故必要かを理解してもらうための説明で、真面目な会計士はあまりしない説明ですので、ご注意下さい。

連結財務諸表における税効果会計の適用については別途、税効果会計の解説のなかで行いたいと考えています。

基礎的な話に戻りますと、債権債務の消去は売掛金・買掛金の他に、貸付金・借入金、受取手形・支払手形など科目が該当します。